【映像翻訳】〜記憶に残った字幕〜備忘録1
2017年12月10日
グッド・ワイフ 彼女の評決 シーズン4−17 死因審問
映像翻訳を習い始めて早1年。映像作品を見るときは、どうしても字幕に目がいくようになってしまった。
映画やドラマは勉強としてではなく娯楽として観ている。でも折角なので、良いなと感じたり、目から鱗が落ちた!字幕は書き留めておこうと思い、ドラマ・映画の台詞を一部引用して記させていただく。
今回は弁護士ドラマのThe Good Wifeから引用。場面の説明をば、簡潔に。
女性弁護士のアリシア(左)は、交通事故に遭い亡くなった男性の妻を擁護する。弁護の相手は、事故に不審な点があったとして保険金支払いを渋る保険会社。手前の男性が保険会社の弁護士、ホブソンである。
保険金支払いについてアリシアとホブソンが交渉を開始する場面を紹介したい。
青文字:Hobson(ホブソン)黒文字:Alicia(アリシア)
"Hello, Will Hobson."
どうも ホブソンです
"I'm so sorry about your client’s loss"
この度は お気の毒に
"Yes, but not sorry enough to pay out her life insurance policy."
それなら保険金の支払いを ←①
"My client Wolf & Bland has some questions about the untimely death."
死因について気になる点があるんです
"Justice Ludwig died in a car accident
I'm not sure how much more accidental it gets."
不運な事故死の他にどんな可能性が? ←②
"Justice Ludwig was talking on his cell phone while driving and his car wasn’t Bluetooth enabled."
ハンズフリー機能がないのに 彼は携帯で通話していた ←③
気になった字幕は上の①〜③。
今回は①について記す。
①の直訳は次の通り。
「気の毒に思ってくれているのはどうも。でも生命保険金を支払うには気の毒な気持ちが足りていないのね。」
となる。より自然な日本語に直すと、
「そう、でも保険金を支払うほどは気の毒に思ってくれていないのね。」
意味は通じるが、これでは字幕の制限文字数を優にオーバーしてしまう。
加えて、アリシア独特の鋭いユーモアが伝わらない。
では、アリシアはどんな気持ちで何を発言したのだろう?
保険金が支払われず困っている依頼人を見て、弁護士は何を思うか?
⇨『気の毒に思うのなら、保険金を支払ってよ!』 という思いになるだろう。
この思いを、弁護士の毅然とした口調で、端的に表したのが、画として紹介した字幕:
「それなら保険金の支払いを」
である。
アリシアのやや皮肉な口調は強くは感じられないが、毅然とした態度がスパッと表現されており、気持ちがすっきりする台詞であった。
全編はNetflixで観れる。おすすめシリーズなので是非!