【映像翻訳】"Polite way of putting it" 〜記憶に残った字幕〜備忘録3
2018年1月28日
グッド・ワイフ 彼女の評決 シーズン6−19 正義なき戦い
映像翻訳を習い始めて早1年。映像作品を見るときは、どうしても字幕に目がいくようになってしまった。
映画やドラマは勉強としてではなく娯楽として観ている。でも折角なので、良いなと感じたり、目から鱗が落ちた!字幕は書き留めておこうと思い、ドラマ・映画の台詞を一部引用して記させていただく。
今回も以前より紹介している人気テレビドラマシリーズ、グッド・ワイフ 彼女の評決の一場面を紹介する。
今回は、私の解釈が字幕と少し異なるために記すものである。背景の説明をば、簡潔に。
物語の主人公アリシア(画面右)は、イリノイ州の州検事に当選したばかりである。
しかし、投票数を不正に改ざんした容疑をかけられ、州検事の座を辞退することを強いられていた。
彼女に辞退を要請しているのは民主党全国委員会の委員長、フランク・ランドー(Frank Landau)であり、半ば脅迫めいた口調でアリシアに辞退を迫っていた。
彼がアリシアに、辞退を迫られた事実について聞き出している場面である。
台詞及び字幕のやり取りは以下の通り。
ランドルフ氏:
Frank Landau asked you to withdraw altogether?
ランドーが辞退を迫ったのか?
アリシア:
Well, that's a polite way of putting it.
言い方は丁寧だった
以上が二人のやりとりである。会話のごく一部を抽出しているので、これだけでは判断がつかないかもしれないが、どうもアリシアの台詞(紫色)の字幕が私の中でしっくりこないのだ。
"That's a polite way of putting it"の"That"は、委員長のランドーではなく、今話しているランドルフ氏の"withdraw altogether"を指している。
このためアリシアの発言は、
「趣旨は合っているが、あなたの発言ほど丁寧な言い方ではない」
すなわち
「もっと荒っぽい強い口調で辞退を迫られた」
という意図と解釈するのが自然だと、私は思う。
そこで、自分だったらどんな字幕を当てようかしら、と生意気ながら考えてみた。
アリシアのセリフは約2秒なので、使用できる文字数は8文字前後。
原文に含まれている要素は、
①辞退を迫られたことの肯定
②言い方の丁寧さの比較
の2点。
可能であれば両方の要素を字幕に表したいが、①の方がより重要なメッセージであることを踏まえ、いくつか候補をあげてみる。
a.もっと荒い言い方だったけど(①②は含まれるが文字数オーバー)
b.要するにそうね(②が抜けている)
c.もっと失礼だったけど(暗に①の要素を含み、②も表している。計9文字)
d.丁寧に言うとそうね(①、②を含む。計9文字)
e.そうとも言えるわ(①しか含まれない)
パッと思いつくパターンを書いてみた。この中だとc. d.がいいかしら。
①と②を約8文字で両方表すのは難しい。。独りよがりな訳にならないよう、他のジャンルの作品も観て、コンテンツの正しい解釈の勉強もし、日本語表現力も磨いていきたいと思う。
※失礼な内容や誤認等ございましたら、お手数ですがご指摘いただけますと幸いです。